清水の頭の病みは、自然と消えていった。
「…大丈夫?」
「あぁ。」
 清水の記憶は、戻っていた。
 「どうしたの?」
 「いや、なんでもない。」
 アヤカには本当のことを伏せた。
 半信半疑だった。
 自分の蘇った記憶、自分の死が、本当かどうかを。

 また携帯から、今度は、音を変えたような声が聞こえてきた。
『アハハハハ!』
 全員が、また携帯の声に集中した。男の笑い声か?荒井が怒鳴った。
「てめぇ!誰だよ?!なにが目的だ!」
 返事はない。
「おい!聞いてんのか?!」
「静かにしなさいよ!」
 ミナが、荒井の落ち着きの無さに苛立ちを持った。
「なんだと?!」
 荒井は、冷静でいるミナに掴みかかろうとした。
「やめろよ!」
 清水が、荒井の腕を掴みを止めた。

 さっきの男の声、電話から笑い声が響く。
 全員がまた携帯に目をやる。
 そのとき、アヤカ以外の全員の携帯が鳴った。
 緊張が走る。
 どうやらメールが受信されたようだった。
 最初にメールを開いたのは、荒井だった。
「なんだ? …読めない。なんて言ったっけ?」
「文字化け。」
「そうだ!それだ!」
 荒井が興奮してそう言うと、答えたミナは、呆れたように言った。
「あたしのは、大丈夫だけど。」
 荒井はミナに詰め寄った。
「な、なんて書いてある?!」
 荒井は画面をのぞいた。
『缶蹴リ 一回戦 オニ 高木ミナ』
「……どういうこと?」
 ミナが文字を読み終えると、シホが続けた。
「私も文字は読めませんが…この画像、見て下さい。」
 シホは、アヤカに携帯を渡し、画像を見せた。
「缶?」
 シホのメールには、画像が添付されていた。地面に転がる空き缶を写した写真だ。
「お、俺にも見せろ!」
 荒井は、いつも強引だ。アヤカから携帯を取り、画像をみた。