霧のかかっていたこの場所も、今では澄んでいてとても綺麗だった。鳥の鳴き声や川のせせらぎ、どこにあるかはわからないが、音だけはする。この場所に普通にキャンプに来ていれば、最高のスポットだ。
 
 荒井の姿は消え、アヤカと清水だけが、残っていた。
 アヤカの携帯への着信やあの男からの連絡は、まだない。
 生きてるうちにやり残したことのある死人が集められ、ゲームをする。勝てば、生き返ることができ、やり残したことを実行できる。
 目を閉じたら、思い出す。思い出せば、メールが読めるようになる。
 あの電話の男は、誰?私達に何を望んでいるの?

『まさか、一回戦で残り二名になるとは、私も予想していなかったよ。』
 考えていると、電話の男の声がした。今回は、携帯からではなかった。
「ど、どこにいる?!」
『あはははは!恐い顔をするな。 …なぁ、ナオヤ。』
 清水の動きがとまった。
「う、嘘だろ…」
「どうしたの?」
 アヤカは、青ざめた清水に聞いた。
「…親父だよ。この声。」
「お父さん…」
 二人は固まった。今までの機械音が消えた途端、鮮明に聞こえてきた男の声は清水の父だった。
「なんで、親父が…」
『ナオヤ、痛かったなぁ〜頭。』
 清水は恐怖から体がふるえている。
 アヤカが聞く。
「どうして…」
『簡単だよ、戸田くん。生き返りたいからさ。』
 自分の名前を呼ばれたとき、アヤカにも緊張が走った。
「清水…、先生?」
『覚えていてくれたかい?』
「先生…」
 清水も驚き、アヤカを確認した。
 アヤカは必死に説明する。
「清水くんのお父さん。私の中学のときの担任の先生…」
 たしかに、清水の父親は中学校の教師をしていた。
『私が死んだとき、君達と同じく携帯にメールが届いたんだ。文にはこう書かれていてね。』
 いかにも先生、授業のような口調で話し始めた。
『生キ帰リタイナラ 五名ヲ選ビ 缶ケリヲサセロ』とね。
 一行読み終えたら、また先生口調に戻る。
『初めはもちろん信じられなかったさ。でも、集められる人が偶然にも見つかってね。』
「じゃあ、みんな…」
『そう。みんな、かつての私の教え子達だよ。』
 アヤカの予感は的中した。