「もしもし。」
「荒井さん、助けて下さい。」
 電話は、後輩のヒロシからだった。
「どうした?」
「なんかわかんないんスけど、北高の後藤って奴の女に、俺が手出したって、ボコられて…俺、なんも知らないんスよ、荒井さん…」
「わかった。今すぐ行く。」
 荒井は、仲間を一番に大事にしていた。
 そんな荒井に、後輩達も絶大な支持をしていた。
 後輩のヒロシを助けるため、仲間を助けるために、一人で北高に乗り込んだ。

「お前か?後藤って奴は。」
「あぁ、なんだ?」
 階段に座るグループ。荒井は、噂は聞いていたので、後藤だとすぐにわかった。
「ヒロシをよくもやってくれたなぁ。」
「あぁ、あの弱っちい泣き虫男か。十分、楽しませてもらったよ。なぁ?」
 周りにいる後藤の仲間達が笑った。
「てめぇー!!」
 荒井は後藤に殴りかかった。が、敵のほうが人数は多い。
 圧倒的に不利だった。
 荒井はすぐに地面に倒れ込んだ。
「…バカだなぁ〜。騙されてるとも知らずにさぁ。」
「なんだと…」
 荒井はすぐには立ち上がることが出来なかった。
「おぃ、出てこいよ!」
 後藤が呼び出したのは、荒井に電話をしてきた後輩のヒロシだった。
「ヒロシ、どうして…」
 ヒロシは、笑みを浮かべていた。
「荒井さん、すみません。」
 荒井は状況がよくわからなかった。
「アンタの女、あいつず〜っと好きだったんだって。」
 後藤は荒井に顔を近づけ、小声で言った。
「だからなんだ…」
 ヒロシは荒井の前に立ち、見下したように言う。
「荒井さんから奪うためですよ。」
「奪う…」
「あと二・三発腹に入れたら、荒井さんきっと死んじゃうなぁ。」
 ヒロシは荒井の腹に思いっきり蹴りを入れた。
 荒井の口から血が飛び出した。
「おぃおぃ、やりすぎじゃねぇのか?」
 あまりの殺気に、後藤が言った。
「かまいませんよ。好きになった女は、力ずくで奪いますから。」
 荒井に、二発目を入れる。
「てめぇなんて好きにならねぇ…アイツは、アイツはそんな女じゃねぇ…」
 必死な荒井の髪をつかんで、ヒロシが言った。
「必ず落として見せますよ。」
 最後の一発が入った。荒井の意識は薄れていった。