「…起きて下さい。すみません…聞こえますか?」
 いつから意識を失っていたのだろう。戸田アヤカは、女性の声で目を覚ました。
「…ここは?」
 アヤカは、あたりを見渡す。深い森の中だろうか。肌寒く、霧がかかっている。よく見えないが、石で出来たオブジェ、石段が広がっている。
「…わかりません。」
 隣にいる沖野シホは、身体を震わせ、今でも泣き出しそうに言った。
「どこだよ!ここ?!」
 出口を探しまわったのだろうか。息をきらした荒井シンジは、地面に落ちていた空き缶を思いっきり蹴った。
「私達だけじゃないようね。」
「はい。みたいですね…」
 アヤカの他に、4名がいた。
 一人は、アヤカを起こしてくれた沖野シホ。
 年齢は同じくらいか年下、うつむいて笑ったことがなさそうで、髪は肩くらいまで、少しメルヘンな服装。
 もう一人は、汗をかいて大声を出していた荒井シンジ。
 見るからに不良で、髪はワックスで逆立て、スエットの上下を着ている。
 その後ろで、静かに座り、手を組んでおでこに付けている清水ナオヤ。白いシャツを着た身なりもいい、ちょっとアヤカのタイプだった。
 向かいには、他より少し年上だろうか。Tシャツとジーパン姿の高木ミナ、携帯をいじっていた。
「ちっ、圏外……」
 ミナの一言に、周りのみんなも携帯を確認した。
「私もです。」
 隣のシホが、アヤカに自分の携帯を確認させたとき、アヤカの携帯が突然鳴った。
 一斉に、アヤカに注目が集まった。