公園に来る前、文房具屋で購入した業務用のカッターを内ポケットから取り出し・・

「おい。なんだよ、、やめろ!!」

彼の叫びは、長くは続かなかった。
私は、彼の心臓を目掛けて、カッターを一気に突き刺した。

「うぅぅあぁぁぁぁ!!!」

何度も何度も、心臓に突き刺した。生温かく、濃い血が飛び散り、私の顔にかかった。それは、視界が見えなくなる程、大量だった。

「よくも私の作品を!!よくも私の作品を!!」

私は、無心だった。その後の事は、あまり覚えていない。気が付くと、私はあの地下の自分の席に、全身血だらけの状態で座っていた。

「血・・」

私は、共同で使用出来る地下に設置されたシャワールームで、IT社長の血を綺麗に洗い流し、あらかじめ用意していたジャージに着替えた。

私は、また席に座り直し、一本タバコに火を付けた。
こんなに美味いと感じたタバコは始めてだった。
パソコンを起動し、途中だった原稿を全選択した後、Deleteキーですべてを消した。
そして、新たな脚本を書き始めた。
今回の話は、大手IT企業の社長が、何者かに鋭利な刃物で殺害される。
犯人は、社長の右腕と慕われてきた会社役員の男で、社長の殺害計画は、役員会議で決定した。という前代未聞の犯行・・

私は、一気にこの物語を書き上げた。
公園に呼び出し、あらかじめ買っておいた業務用のカッターを社長の心臓に何度も突き刺す。許さない・・許さない・・

役員の男が、社長を殺害する公園でのシーンの緊迫感は、我ながら震える程で、快感すら覚えた。

そう、リアリティー。
ドラマ『沈黙』に足りなかったものは、まさしくこのリアリティー。真実だった。

私は、見事な殺人を書き上げた後、急な睡魔に襲われた。