私は、夜風の冷たい公園にいた。
何だか懐かしい匂いがする。子供の頃、よく遊んだ遊具。ジャングルジム、ブランコ、鉄棒のすべてが、大人になったせいか、小さく見えた。

「久しぶりだな」

私の方に、一人男が歩いてくる。

「元気か?」

いかにも高級そうなスーツに身を包み、革靴を履いた男が、私の前で足を止めた。
私が呼んだのだ。
彼は、私の中学の同級生で、他界した父親の会社を継ぎ、若干、二十六歳で、大手IT企業の社長になった。

「儲かってるな」

「そんなことないよ」

私は、公園のベンチに座る様、彼を誘導した。

「聞いたよ、小説家になったんだってな」

「まぁ」

過去の話だ。今は、有名ドラマの脚本家だ。まだ、選ばれた事はないが・・

「賞とか受賞してたもんな。お前には才能があると思ってたよ」

嘘だ。私が、小説を書いていた頃、アンタは、散々バカにしていたじゃないか。私の書いた原稿を学校の廊下でビリビリに破り捨てたじゃないか。

「許さない・・」

つい、心の言葉を発してしまった。

「どうした?」

「許さない」

「なんだよ、急にどうしたんだよ?!」

後には引けない。私の中で、もう一人の私が目を覚ました瞬間だった。