「おめでとうございます」

拍手は無かった。選ばれたのは、私の隣の席で、淡々とパソコンに向かって書き続けていたあの《目が死んでいる男》だった。
目が死んでいる男は、五百万の札束を貰うと、自分の鞄にゴミを捨てるかの様に、投げ入れた。
現金五百万円の大金の扱い方を見て、私は少しばかりの嫉妬を覚えた。もう、何億も貯金があり、何度も選ばれているのだろうと・・
私は、悔しくなった。恥ずかしながら、自分の才能を信じていたのかもしれない。

今は、どうしても金が必要だった。多少なりとも疑っていた。五百万なんて・・

しかし、そんな疑いと騙されているのではないかという不安は、今日、見事に目の前で消えた。五百万円は本当に貰える。そして、視聴率40%超えで、一千万円を手にする事が出来たなら、十分過ぎる生活が、明るい未来が待っている。

「次のセレクション審査まで、皆さん頑張って下さい」

私は、決心した。今のドラマ『沈黙』に求めるものは、リアリティーだと・・
限りなくノンフィクションに近い・・

いや、ノンフィクション・・

真実を・・

私は、外へ出た。真実を執筆する為の・・、資料を手に入れる為に。