「分かりました。宜しくお願いします」

「では、こちらの契約書にサインを・・」

「契約書?」

「はい。簡単に説明させて頂きますと、毎週金曜日にセレクション審査というのが御座いまして、次回放送分の脚本をここに居る誰の作品で行くかを話し合う審査になります。原稿の提出期限は、毎週木曜日です。提出は自由で、選ばれた脚本担当者には、五百万円・・」

「五百万?!」

私は、あまりの金額に驚き、静かな部屋の真ん中で、声を上げてしまった。

「はい。作品が選ばれれば、五百万。さらに、視聴率が20%を超えると百万、30%で二百五十万。40%超えで、五百万。前回の放送で、あの端に座っている彼が、40%を出したので、ボーナスと合わせ、一千万円。彼の銀行口座に振り込ませて頂きました」

「そんなに・・」

「ただ一つ、自分の作品が選ばれなければ、給料は御座いません」

今の私に収入は無い。過去の栄光や、頼りにしていた印税もすでに底をついていた。
毎週金曜日に行われる「セレクション審査」これに作品が選ばれなければ、私はもう生きては行かれない。

「やります!!」

私の考えに、悩むという行為は無かった。私は、机の上に置いてあったサインペンを取り、契約書にサインした。

「それでは、頑張って下さい。次のセレクション審査は、五日後です」

そう言うと、男は先程まで整理していた机の上の資料を大きな封筒に入れ、そそくさと部屋を出て行った。

私は、誰も使っていないであろう席に座り、パソコンの電源をつけた。
そして、五日後のセレクション審査に向けて、殺人をテーマに脚本を書き始めた。