「現在、在籍者は四名。ここに座っている彼等達が、視聴率40%のドラマを作る脚本家達です」

私は、もう一度ゆっくりと部屋を見渡した。
四人の男の内一人は、完全に目が虚ろで、死んでいる。異様なオーラが伝わってくる。無心で書き続けている者。寝ているのだろうか?背中がピクリとも動かない者も居る。

「あなたを少し、調べさせて頂きました」

「そうですか」

「あなたの才能には、尊敬しています」

私は、物語を書くのが好きだった。中学の時、父親から使わなくなったワープロを譲り受けた事がキッカケで、小説を書く様になった。
高校の時、最年少で作品賞を受賞した。何と無く送った原稿が出版者の目に止まり、その作品が、ドラマ化・映画化までされ、私は、それから数ヶ月間 ”時の人” となった。

父もまた、有名な小説家だった為、二世、二世と囃し立てられた。しかし、それからの私の小説家人生は、どれも中途半端で、以降、ヒット作を世に送り出す事が出来なかった。

「ここで、あなたも脚本を書きませんか?」

「えっ、いいんですか?」

「もちろんです!!あなたの様な方に『沈黙』を書いて頂ければ、世界観が広がり、さらに、視聴率は上がる。視聴率が上がれば、番組にスポンサーが付きます。大手の会社から広告費用を頂くことが出来れば、それこそが、私が夢見たビックビジネスです!!」

私の肩を押さえ、興奮しながら男は目を輝かせた。