ロックが解除され、男は重い鉄の扉をゆっくりと開いた。

「ここは・・」

窓一つ無い薄暗い部屋には、錆び付いた机が並び、クッションがボロボロに破けた椅子が、すべて壁の方を向いて設置されていた。

パソコンのキーボードを打つ音だけが、鳴り響き、会話は一切聞こえなかった。

「皆さん、なにを・・」

部屋には、四人の男性が、パソコンに向かって作業をしていた。

「あなたは、『沈黙』というドラマをご存知ですか?」

「えっ、はい」

男は、自分の机の上に無造作に散らばった資料を一枚ずつ片付けながら言った。

「『沈黙』というドラマは、一話完結になっております。ある主人公が、毎回、様々な殺し方で、殺人を犯していくというストーリーで、放送開始時は、『残虐過ぎる』『教育に悪影響』など世間から批判され、一時は、社会問題にまでなった・・と言いましょうか」

「観たことはあります」

「そうですか。批判されればされるほど、視聴率はウナギ上りで、ついには、先週の放送で、40%を越えました」

「40%・・」

「これ、今年の紅白歌合戦以来・・」

「でも、そのドラマとこの場所とどんな関係が・・」

「ここでは、そのドラマ『沈黙』の脚本を書いているんですよ」

「脚本?!」

「驚きましたか?」

私は、動揺した。何処に存在しているのかも分からない地下の一室で、ドラマの脚本がこうして書かれている事を知り、私の身体にまた震えが起こった。