「そうだけど、おじさん誰?」

最近の若い奴は・・と思ってしまう私は、もう、世間では ”おじさん” なのかもしれない。
二人の女子生徒は、携帯電話でメールを打ちながら、私の事をまるで「変質者」の様な目で、見ている。

「君たちの担任の元教え子なんだ」

「へぇ~そうなんだ」

まぁ、妥当な返答だろう。別に、私が君たちの担任の教え子であろうと、興味など沸く事は勿論ないだろう。

「君たちから見て、担任の先生ってどんな人?」

「ん~別に、良い先生だと思うよ」

女子生徒の一人が言った。先生の評価は高い様だ。私が生徒だった頃から、あの先生は人気があった。温厚で、怒ったところは見たことがない。生徒と真剣に向き合い、答えを導き出してくれる。

そんな先生の悲鳴が、今の私には聞こえてしまうのだ。

「ちょっと、先生について聞きたい事があるんだけど・・」

「別にいいよ、暇だし。で、おじさん誰?」

私は、ある雑誌の記者だと答えた。学校教職の実態という特集記事で、取材をしていると説明した。

少し歩くと、生徒の一人の携帯電話が鳴った。

「あっ、ごめん。彼氏に呼ばれちゃった!またね」

「えー、マジで!!」

女子生徒の一人が、逃げるように去っていった。

くそっ。まぁ、一人でも十分だ。私は、残された女子生徒を路地裏へと連れ込んだ。