聡美の目が真剣になった。
「知ってんの?」
「いや、そうじゃないんだけど。海……、海…どっかで聞いたような…。」
今度は少し険しくなった。
「ふうん。
ま、いーんじゃない。思い出したら教えてよ。」
「うん。
あー、なんだっけなぁ〜。思い出せないのって気持ち悪いっ。」
と、聡美は両手を頭にのせてうなる。
その様子を見ていると笑ってしまう。
オレンジジュースを注ぐ。
あたしの一杯でオレンジジュースの1㍑のパックは空になってしまった。
はや。
もう無くなっちゃったの?
そんなに飲んだっけ。
「あぁーっっ」
急に聡美が大声を出す。
「もう、びっくりしたぁ。
ごめんごめん、だってこのオレンジジュースはまるんだもん。」
許しを得ようとした。
すると聡美はあたしに顔を寄せてきて言った。
「思い出した!」
どうやら、先ほどの聡美の叫びはオレンジジュースではなく、あの人の事をやっと思い出せた事の叫びだったようだ。
