ガラクタのセレナーデ

「あなたの名前は芹沢那智……
 由羅さんの弟」

 いろはは独り言のように呟いた。

 那智がゆっくりと顔を上げる。
 だが、何も答えず、那智はただ、いろはを見詰め返すだけだった。

 否定をしないのを肯定と受け取り、いろははさらに続けた。

「だから、あのガラスの兎を、いつまでも眺めていたのね。
 あなたはあの時……
 由羅さんのことを、思い出していたのね」

 那智は聞こえているのか、いないのか、いろはの言葉には何の反応も示さず、無表情のまま、ただぼんやりといろはを見詰めていた。

 だがしばらくして、ようやく口を開くと、消えそうなほど小さな声で呟いた。

「センセー、もう全部終わったんだ。
 俺とあんたは、これで赤の他人。
 金輪際関わることもない。

 頼むから……
 出てってくれない?

 一人になりたいんだ」