曖昧な言い方なのは、すぐにそれが表情から消えてしまったから。
「あー…。」
思わず漏れた呟きに黒川くんが「どうかしたの。」なんて反応して。
両手を自分の前でブンブンと振る。
「な、何でもないよ…!?」
「…ふぅん。」
自分でも分かる挙動不審っぷりに、黒川くんは納得いってないみたいに眉を少し寄せて。
でも諦めたようにため息をついた。
そして。
「……っ!!」
ぎゅう、と。
左手に伝わる暖かい温度と、握られている感触。
思わず、黒川くんの方へ首を向けて黒川くんを凝視してしまった。
黒川くんは何でもないような表情だったけれども。
「……ああもう、ずるいー…。」
…ほんの少しだけ。唇の端が持ち上がっていたから、心臓がキュンと締め付けられてしまった。

