「そりゃあ昔から隆人が、っと……」

そして急に口ごもる。顔を歪めて、気まずそうな表情をしていた。
それに対し、隆人は一切顔色を変えない。

「じゃあ俺たち帰るから。な、隆人」

「そうだな、もう電車来るし。じゃあね、みんなまた明日」

そうして2人は、翼たちとは逆のホームへ消えていった。
完全に姿が消えてから、翼は振っていた手を下ろす。

「野球で何かあったのかな」

「うん…そんな感じだったね」

今日香も何か感じ取ったようだった。


「それより姉ちゃん、金」

空気を読まず、陽が横から入ってくる。
昔からマイペースな男だった。

誰がどうしようと、そのペースは崩さないのだ。夏の甲子園の試合をテレビ中継された時、実況の人から「彼のマイペースっぷりは誰にも真似できませんねぇ。だから最強の武器になりますよ」と言われた事もあったほどだ。
それが武器になったのかは分からないが、全国準優勝はしたけれども。


他人はよく陽のそういうマイペースな所を褒めるけれど、翼にはよく分からなかった。


そんな陽の肩を今日香が叩く。