最悪だ……。


有原翼(ありはらつばさ)はベッドの上でそう呟いた。


ボサボサの髪のままベッドを飛び出し、階段を慌てて駆け下りる。


階段の近くには窓があって、そこからはいつも空がよく見えた。


今日は良い天気だったが、今はそんな事、彼女にとってはどうでもよかった。


顔を洗って、髪をとかして、制服に着替えて、電話の鳴り響くリビングに滑り込むようにして入る。

同時に母の洋子(ようこ)が受話器を取り、「おはようございます」と挨拶していた。

その横を通り、翼は用意されていた朝ごはんのパンにかじりつく。
横目でチラリと時計を見ると既に8時10分を過ぎていた。


そんな娘を見て洋子は、顔から受話器を離し「やだ、翼。あんたまだいたの?遅刻じゃないの」と言った。



朝ごはんをまだ食べ終わっていなかったが、翼は隣に置いてあった牛乳を飲みほして玄関を出た。