「…ないっ。ないわ!嘘ぉ……。どうしよう!!」
山田先生のいる教室で叫ぶ美和。


うるさい。ザマ子こと山田先生に
五月蝿いわ!おだまり!
って怒られるよ美和。

呆れ顔で美和とザマ子を眺めた。


「西本さん…っ。」

ほうら、そろそろザマ子のお怒りが飛ぶよ〜。
耳をふさぐ真似をする男子や美和を親しみを込めて笑う女子たち。

あたしもフフ、と鼻で笑っていた一員だった。


でも、
あたし達の予想は大きく外れてしまった。




「…西本さん?どうなさったの。何をなくしてしまわれたの?言ってご覧なさい。きっとクラスメートみんなで探してくれますわ。」

ザマ子はニコリと笑みを浮かべた。


………ザマ子が…

笑った?!

「えぇぇえぇっ!」
「嘘だろおい。」
「ザマ子どぉしたんだよ」
「変なもん食ったか?」
「まさかーっ!」
クラス中がどよめいた。



あたしは美和の無くしたものなんかよりザマ子の豹変ぶりにただただア然としていた。

「ザマ…じゃねぇ、山田先生どしたんすか!どっか調子悪いんすか?」
男子がわざわざ手を挙げて質問した。


ザマ子がこんなコト答えんのか…?

「なっ…何をおっしゃっているのっ?わたくしはいつでも普通でいてよ。…西本さん、どうなさったの。」

ザマ子………???


超疑問…

「……いんです。」
「はい?」
「…ないんですっ!あたしの財布に入ってたはずの2万円が!」

え………2万円て…

あたしの脳裏によぎったのは朝の“ありがとう料金”と称した2万円もの大金。


美…和……?
2万円て…。

「本当ですか!西本さん!それは一大事ですわ。心当たりはありませんの?お財布をどこかへ置いて外出した覚えなどは?」

ザマ子はいつにも増して真剣な表情で言った。


「…クラスメート全員の財布の中身のチェックをお願いします。」

美和は大きな瞳をうるませてザマ子に要求した。

ちょ……っ。
財布の中身?
そんな…2万円てあたしに差し出した2万円のことを言っているの?

「あっ、あのう!」

「……なんです笹村さん。」
美和へとは違った表情でキッとあたしの発言を遮った。