こんなに……
もらえないよ…。

どうしよう、
お母さんに友達から2万円も貰ったなんて
知られたら、
ただじゃ済まされない。


また、なじられるかも。
また、殴られるかも。
また、友達ん家に謝りに行かなくちゃいけなくなってしまうかも。
また、ご飯抜きにさせられてしまうかも。
また、また、また、また……………


とにかく
お金のやり取りが
あったことは隠さなくちゃ。

ばれてはいけない。
絶対に。


ばれてしまったら
一貫の終わりだ。
きっとお母さんはあたしに
失望し、絶句し、呆れて、見放す。



どうか…どうかそれだけは……っ!

あたしは神様に祈った。

大袈裟だなんて笑うひともいるかもしれない。


でもあたしにとっては全く大袈裟ではない。

あたしのお母さんはとても怖いなんてレベルではない。



もうとっくに“恐怖”なんてレベルではないのだ。

“恐怖”レベルならば、ばれないように偽造孝策する余裕も
生まれたかもしれない。



だがもうそんな余裕は微塵もないのだ。

彼女だって実の子供でもない赤の他人がヘマをしただなんて知ったら自分の顔に泥を塗られた、と騒ぐのも仕方がない。


いまのお母さん、笹村千里とあたしは血が繋がっていない…………。

本当のお母さん、笹村理奈は
あたしを産んですぐ死んでしまった。


そしてお父さんは
あたしが苦労しまいと、いまのお母さんと再婚したんだ。

いまのお母さんも、最初はすごく優しかった。
「あげはちゃん、お腹空いてなあい?食べたいものがあったら何でも言っていいのよ、だって私はあげはちゃんのお母さんだもの!」


とても
嬉しかった。
とても
安心した。
とても
慰められた。

でも、前のお母さんの代わりに、とお父さんが見繕ったいまのお母さんとお父さんとの間に深い愛情があるわけもなく、あっさりと離婚した。


子供心に思ったこと、それは優しい新しいお母さんのもとで暮らすこと。

お父さんのこともすごく好きだった。


だが最初のお母さんのことを覚えてるはずもなく、
ただただ“お母さん”という存在が
嬉しすぎた。