「―…ぁっ……ん……
…」
誰?
タケルは今誰と何をしてるの?
「……ぁっ……
っ……タケル……」
「…はぁっ……はぁ……
…ユウコ……」
―え?
今ユウコって言った?
普通ならこういう場面、走って帰るはずなんだけど…
私は無意識のうちにドアの取っ手に手をかけていた。
―ガチャ
部屋にはタケルと女の人がいた。
もちろんベッドに……。
「……どうして「タケル……」
タケルの言葉を遮って名前を呼ぶ。
だけど繋ぐ言葉が思いつかない。
私は、走って走ってとにかく走った。
気が付いたら真子のいる公園にいた。
「真子ぉ………」
真子は泣いている私の隣に座り、背中をさすってくれた。
それから私が見た出来事そのままを真子に話した。
「杏里は偉い…。
偉いよ……!」
真子はそういいながらよしよし、と何度も私の背中を撫でた。
何時間そんなことを繰り返しただろう。
いや、実際は数10分のことだったと思う。
そのくらい、私には長く感じた。
見上げた真子の瞳には涙がたくさん溜まっていた。

