恋のベクトル。



100Mトラックに着いたら野崎と
友達の木村がもういた。


俺に気付いた木村が小走り
で近付いてきて、


「あだ名」


と言った。


「…あだ名がどうした?」


あだ名とは[巨人]の事だろう。


「梓が勝ったらあだ名呼び
禁止だからね」

「…それをなんで木村が」

「だから梓には内緒。高梨君さ、
異性からチビ呼ばわりされたら
どう思う?嬉しい?」


「いや、確実に嬉しくない」


軽く誘導尋問されているような
感じで気に食わないが答える。


「じゃ、そういう事だから」


「…………?」


「そんじゃ頑張ってね!
私は梓応援するけれど!」


「…せんきゅ」


一言多かったぞと言う台詞は
腹の中にしまっておいた。