「でも…郁の気持ち、全然わかってなかった。
郁はいつでも私の隣にいてくれてたのに。
…ホントにゴメンナサイ…」





俯いた茜は。

俺のワイシャツを“キュッ”と摘んだまま離さない。





「郁が好きなの。
だから…“知り合い”なんて言わないで…
“生徒に戻る”なんて言わないでよ…ッ」





大きな目の縁に溜まった涙が。

ハラハラと茜の頬を伝って落ちる。





…なんてキレーなモンじゃなくて。





真っ赤になった目から涙がボロボロと溢れては流れ、溢れては流れ。

もう化粧なんてとれかけちゃってる。





…あぁ、もう。





こんなになりながら。

こんなコトカミングアウトされて。

黙って何もせずにいられる男なんている?





そう思い。

茜に手をのばし掛けたトキ。





…トンッ。





少しの勢いと共に。

茜が俺の胸に飛び込んできた。