「…杉原先生が合鍵で入ってこようとしたトキ。
ホントはすごく怖かった」
俯いたまま茜は言葉を紡いでいく。
俺はそのまま話を聞いていた。
「だから郁が出てきてくれてホントに“ホッ”とした。
“自分の彼女がイヤがるコトされてるのわかってて。
黙って見てる男なんていない”
そう言ってくれて嬉しかった」
そこまで言って。
茜は顔を上げて俺を見上げた。
「郁が私を想ってくれてるように。
私も郁が大事なの。
郁が傷つくようなコトはしたくない」
「“先生と生徒”。
それは郁が卒業するまで変わらない。
ちょっと間違えれば“それ”が理由で郁の未来に傷がつく」
そう言うと。
茜は俺から視線を外した。
「…だから…必要以上に気にしてた。
“私は先生なんだから”って」