インプラント

「沙希!」




しかし男の叫びは届かない。










「二粒目を飲んだのね」





その声は突然男の頭の中に響いてきた。
男はあたりを見渡すが誰もいない。


「薬を一粒飲むと人間の心が総て見える。


人の妬み憎しみ嘲りが街に渦巻く姿が
実体化してあなたに襲いかかってくるの。


でもそれは人間の心の表面的なものでしかない。


人は皆心の奥底にある大切なものを守るため
憎しみの鎧を着ているんだから」