押しかけ×執事

 心のどこかで知っていたのかもしれない。

 ここで生活したいと強く願う気持ちがあることを。

 それが許されようとしている今、あたしは自分の気持ちを優先させようとしている。

「……」

 ちらり、と顔を上げて一瞬だけ柏木さんを見た。

 微笑んだ表情のまま、あたしを見ている。

 どきっとするくらい深くて吸い込まれそうな目。

 それに……お兄さんみたいに少し甘くて整った顔。

 慌てて視線を逃がし、また俯く。

「どうだい? さつきちゃん」

 再び俯いたあたしに、お兄さんが優しく聞いてくれる。

「もちろん、ぼく自身も様子を見に訪れるつもりだよ」

「――お兄さん」

 いい、のかな……?

 あたしは頭の中で色んな選択肢を浮かばせて考えていたけど、

「わがままだと分かっています。けど……もう少しだけ、あたしをここに住まわせてください」

 頭を下げて選んだのは、ここに残りたいというあたしの希望だった。