押しかけ×執事

「さつきちゃんを1人でこの部屋に住まわせるなんてことは出来ないから、彼に住み込みでさつきちゃんのお世話をしてもらうことにしたんだ」

 どうだろう? と、お兄さんがあたしに問いかける。

「優人は有能な執事だからね。出来ないことは何もないよ。それこそ、頭の先から足の先まで至れり尽くせり」

 なんだかその言葉の響きが恥ずかしくって、あたしは思わず頬を染めて俯く。

「あぁ……その、変な意味じゃなくて……優人は男だけど、安心してもいいよってことなんだ。――まぁ、慣れない相手を安心しろっていうのは難しいと思うけど、彼の人柄はぼくが保障するし、さつきちゃんをここで1人きりで住まわせるなんてことは出来ないからね」

 保安の意味もあるし、と言ったお兄さん。

 確かに――物騒な事件が起こらないとは限らない。

 でも……男の人と、2人……?

 それはそれで、酷く緊張する。

 というより、あたしがここに居たいなんて言い出したから、こんなことになったのよね。

 だったら、昨日のことを謝って仲春の家に行くって言えば……

 そうすれば、全ては上手くおさまる――はず。

「……」

 頭ではちゃんと分かっていたのに。

 そのときのあたしは、それが出来ないでいた。