「家賃や生活費やその他全てのお金の心配はしなくていいよ。それはちゃんとぼくが面倒を見てあげるから」
そう言って、お兄さんは優しい微笑みでそっとあたしの髪を撫でてくれる。
それ以外の詳しいことは言わなかった。
きっと……あたしの昨日の言動があったから、なんだと思う。
「……」
それを感じた瞬間――心苦しい、と思ったけれど。
心のどこかでは、この部屋とお別れせずに済んだことに対して酷く安堵している自分もいた。
それじゃあ駄目……分かっているけれど。
でも――そのときのあたしは、まだまだ幼い子供だった。
「――彼は、柏木優人。うちで長年仕えてくれている使用人で、役職は執事。厳密に言えば家令っていう肩書きなんだけどね。優子さんのお葬式のときも色々と手伝ってくれていたんだけど、あの時は喪服だったから分からなかったかな」
状況が飲み込めていないあたしに、お兄さんは丁寧に説明してくれる。
玄関先で話すのも――ということで、柏木さんにも部屋に上がってもらい、小さいテーブルの前にお兄さんとあたしが向かい合うように座った。
柏木さんはお兄さんの近くで立っている。
執事の柏木さんが立っていることは、仲春の家じゃそれが当たり前なのかもしれないけれど……慣れないあたしはそれがすごく気になって、落ち着かない様子でもじもじしていたら、察してくれたお兄さんが柏木さんを座らせてくれた。
そう言って、お兄さんは優しい微笑みでそっとあたしの髪を撫でてくれる。
それ以外の詳しいことは言わなかった。
きっと……あたしの昨日の言動があったから、なんだと思う。
「……」
それを感じた瞬間――心苦しい、と思ったけれど。
心のどこかでは、この部屋とお別れせずに済んだことに対して酷く安堵している自分もいた。
それじゃあ駄目……分かっているけれど。
でも――そのときのあたしは、まだまだ幼い子供だった。
「――彼は、柏木優人。うちで長年仕えてくれている使用人で、役職は執事。厳密に言えば家令っていう肩書きなんだけどね。優子さんのお葬式のときも色々と手伝ってくれていたんだけど、あの時は喪服だったから分からなかったかな」
状況が飲み込めていないあたしに、お兄さんは丁寧に説明してくれる。
玄関先で話すのも――ということで、柏木さんにも部屋に上がってもらい、小さいテーブルの前にお兄さんとあたしが向かい合うように座った。
柏木さんはお兄さんの近くで立っている。
執事の柏木さんが立っていることは、仲春の家じゃそれが当たり前なのかもしれないけれど……慣れないあたしはそれがすごく気になって、落ち着かない様子でもじもじしていたら、察してくれたお兄さんが柏木さんを座らせてくれた。

