押しかけ×執事

「あ……」

 誰だろう?

 お兄さんに向けた言葉を区切り、あたしは玄関を見つめる。

 コンコン――

「はい――」

 もう1度ゆっくりと鳴ったから、あたしはお兄さんの横を抜け、玄関に小走りで向かう。

「あの、どちら様ですか?」

 開ける前に、ドア越しに声をかける。

 用心のため、小さい頃からお母さんにドアをすぐに開けちゃダメって教わった。

「朝から申し訳ございません。私、仲春の家の執事でございます」

 執……事?

 執事、って……?

「え、と……」

 どうしていいのか分からなくなったあたしは、思わず助けを求めるようにお兄さんを振り返る。

「大丈夫。今の声はぼくの知っている声で、ちゃんとうちの使用人だから」

 戸惑うあたしを安心させるように、お兄さんは微笑みかけてくれながらゆっくりと頷いてくれた。