拓先輩はそれを見つけるなり、


女子高生の輪にいきなり入り、


「おい」


と低い声で威嚇した。



先輩、怖いしっ…。



「何よアンタ?」


女子高生だって負けてない。



「もう二度とうちの店にくんな。 お前らみたいなのがいると正直メーワク…っていうか、営業妨害で警察に突き出すよ?」


「はぁっ? なんでウチらが営業妨害なワケぇ? つかウチら、客なんですけどっ!」


「客は客でも、店員を大切にできないヤツは来て欲しくない。 店側としては当然だろ?」


「バイトのクセに、何言っちゃってんの」



女子高生は、先輩の左胸についていたバイトの名札を見たようだ。



「バイトで悪いか? バイトでも店に対する思いはあるぞ?」


「…うっさいなぁ」



先輩が何か言うたびに、女子高生たちは口ごもる。



「お前ら二度とくんじゃねえ!」



先輩がこんなに怒って、こんなに声を張り上げてるのを、


初めて見て、聞いた。



先輩の新しい表情、感情。



「うっさい! もう行こっ、コイツ相手にしてたら疲れるぅ」



女子高生たちは地面においてあったカバンを手にもち、


速やかに駅の方向へ向かっていった。