先輩。


拓先輩は、温かくて、優しくて、


守ってくれて、


本当にいい人。



「はぁー…、疲れたぁ~」


店から出てから、私は思い切り背伸びする。


大きく息を吸い込んで、また吐く。




「コラっ」


「いて…っ」



コツン、と小さな音を立てる。


拓先輩が、私の頭にこぶしを軽く当てる音。



「…先輩、ありがとうございました」


「いいけど…。 コレでバレてたら、大変な事になってたぞ?」


「はい…。 ほんとに助かりました」



先輩はちょっとだけ怒ったような顔をしたけど、


すぐに笑顔になり、


私の頭を少し強く撫でた。



「…先輩?」


先輩は、肩を小刻みに震わせ、


その目には涙が浮かんでいた。




「先輩!?」


「悪い…。 なんか安心したら急に…」



ホントは、先輩のほうがドキドキしてたのかな?


「桜がもし退学なんかになったら…って、本当はすごく心配してたんだ」


「先輩…」


「よかった。 これで更に再確認できたわ。 俺、ホント桜のこと好き」


「…ありがとう」



敬語にすることも忘れて、私は先輩に抱きついた。



外はすっかり日が暮れて、もう真っ暗だった。





「ねぇ、アレ…」


「あっ、ホントだ。 アイツどーなったのぉ?」



店の前の電信柱のまわりに、


あのときの女子高生がたむろっていた。