「それだけはお願いします…」


「まさか中3だったとはねぇ~。 あ、でもまぁそんな顔でよくごまかせたね?」


「…っ」


「アタシら高校生から見たら、ただの幼い顔に、メイク頑張ってしてるようにしか見えないよ?」


私のことをキッとにらみつけてから、



「あーあ、この生徒手帳どうしましょぉ?」


仲間たちとわざとらしく大きな声で言った。



「あのっ、大きな声で…やめてくださいっ」


「アンタ、注文聞きに来た時からうっとうしかったんだよ。 なんだよ『山本桜』って。 ありがちな名前すぎて笑えるんですけどぉ?」



私のコンプレックスの名前…。


でも拓先輩は私の名前を、良い名前だってほめてくれたから…っ。


ダメだ、泣くかも。


涙腺が緩みはじめる。



私は泣きそうになるのをこらえて、そのせいで無言になる。



先輩の店員には、


「もういいから! さがってなさい」


なんて注意されちゃって…。



私は更衣室へと戻った。



…どうしよう。


あの生徒手帳。


バレちゃうと、大変なコトになっちゃう。