「衣都ちゃん」

「はい」

「何かいいことでもあった?」





「いや……別に」



早苗さんに言われて気づく


どうやらあたしは

思ってることとか
感じてることが

顔に出やすいみたい



ポケットに入った紙切れを意識して

藤森 晴緋を意識する





『はい』




カレから差し出されたのは


携帯の番号が書かれた紙切れ



『今日 家に携帯忘れたんだよね だからはい』



思わず受け取っちゃったけど


かけないだろうな

ていうか

絶対かけない



あたし 電話 嫌いだし

そもそも人と話すのが面倒だから嫌い



オーナーの言う通り



浮かれてないって言ったらウソになる


高校生になってから


学校の人の連絡先 教えてもらうの初めてだから


それに

友達になりたいなんて直接言われたの

生まれて初めてだから


本音じゃなくても嬉しかった



だけど

別に期待なんかしてない

藤森 晴緋は誰にだって優しくて

浮いてるあたしに気を遣ってくれてるって

ちゃんとわかってる




向き合う勇気はない


ひねくれ者のあたしと
人気者のカレは

根本的に違う