「………あ」
下駄箱の前
かがむ背中に目が止まる
「衣都?」
「あ……おはよ ハル君」
振り返ったのは紛れもなく衣都だった
「髪型変えたんだね」
「………うんっ」
俺の言葉に恥ずかしそうに笑う
「どう………かな?」
「すっげぇ似合ってる」
お世辞なんかじゃなくて本音が出る
衣都が笑う
「行こっか」
「うん」
チャイムがなるまであと1分をきっている
俺は急かすように後ろから衣都の背中を押す
本当はただ顔を見られたくないだけ
いま真っ赤なんだろうから
好き
好きだよ
俺は衣都の笑顔が好き
笑ってくれるなら 隣にいるのは俺じゃなくてもいいって思ってた
でも そんなの偽善だ
本当は後悔してる
気持ちを伝えなかったこと
稚空よりも先に「好きだ」って衣都に言わなかったこと
でも もう遅い
衣都は友達の彼女
よりによって親友の彼女
俺はもうどんどん可愛くなっていく衣都をただ見てることしかできない
稚空のためにキレイになっていく彼女を黙って見てるしかできないんだ
1番そばにいたかったのに 今は誰よりも遠い
苦しいのに何もできない



