なんで芽依ちゃんがそのこと知ってるんだろう

あたし……言った覚えないんだけどな?

少し間があって芽依ちゃんがバツの悪い顔をした


「行ってくる」


別にあたしは芽依ちゃんを困らせたいわけじゃない

短くそれだけ言って秦野君のところに向かった



「知永」

「……お疲れ様」

「本当に来てくれたんだ」

「うん」


周りの人たちの視線が痛くて 俯き気味で話すあたし

そこにハル君の姿がないことが唯一の救いだったりするんだけど


「ちょっと場所うつさね?」

「………うん」


遠くにいる芽依ちゃんを見ると口パクで゙喫茶店にいるね"って言ってる



あたしたちは2人で並んで炎天下の中を歩き始めた


「ねぇ 秦野君」

「ん?」

「あの……お願いがあるんだけど」

「珍しいね 知永がそんなこと言うの」



秦野君は手に持っていた野球帽をあたしの頭に乗せた


「焼けるよ」

「………ありがとう」


「で 何?」


なかなか切り出せない

自分のペースに持っていけない

相手が秦野君だからかな?



「………やめないで」

「え?」

「部活 やめないで」


こんなことしかあたしには言えない