「…さて。今夜は何にしようかなぁ」

授業を終えた私は、いつものように駅前にあるスーパーに居た。

夕飯の買い物に来た主婦がごった返す中では、学生鞄を片手に制服姿の私は少し目立っているけど、その感覚にももう慣れた。

ここには、小学生の頃からお使いによく着ていたし、中学にあがってからは、私が夕飯の支度をしているから。

生まれた時にはもう、ママは居なくて、パパ一人で私を育てるのには苦労してきたことはよく分かるから、私は当然のようにお手伝いをしてきた。

パパに『ありがとう』と言われるのが大好きだから。

優しく笑いながら頭を撫でてもらうのが好きだから。

そして、何よりパパが大好きだから、パパの役に立ちたくて『イイ子』にしてきた。

そんな私のことを、パパがどう思ってるかは分からないけど。


そんな事を考えていると、目の前にあるじゃが芋が安いことに気付く。

(肉じゃがにしようかな)

肉じゃがに、ほうれん草のお浸し、ワカメと油揚げの味噌汁。

これぞ『ザ・和食』というメニューを思い付き、食品を買い込む。

スーパーの白いビニール袋をカシャカシャと鳴らしながら帰路につく。

見上げた空は、薄青から橙へと変化している最中。

ふと、洗濯物を干していることを思い出し、私は足を早めた。