4月に、雪。 あたしは記憶の片隅にある、かけがえのない日々を思い出した。 あの人から手紙が届いたのも、確か雪が降っていた。4月なのに。 あの日の雪だけは、頭の中に、溶けずに残っている。 「お母さーん!!本当急いで!!」 「瑞希ー!!本当に急げ!!」 少し遠くから二人が振り返って、同時にあたしを呼んだ。 「せんせー、あたしはせんせーに言われた通り、幸せになったよ。」 呟いた声は、空に吸い込まれた気がした。 end.