*恋の味[上]*【完】



暫くすると、お父さんが見えた。

目があうと、微笑みながら小走りできた。

「待たせたな」

そういう顔は、心を和ませてくれる。

「ううん、大丈夫」

なにが大丈夫なのかってなるけど、あえてスルーしてやってください。

ほら、たまにあるでしょ?うん、あるの!

お父さんにツっこまれる前に…!

「早くいこ〜!」

子供みたいにお父さんの腕を引っ張った。

お父さんは気づいてないかのように、

「行くか」

と、また笑った。

エレベーターに乗り、18階というボタンをお父さんが押したから、私たちは18階なんだなと思った。

高いところが大好きな私は、18階から見える夜景を想像すると、早く夜がこないかと待ち遠しかった。

エレベーターの中にいる時間は、高いところまで行くからなのか、長く感じた。

“チーン”

着いたというベルのような合図の音が鳴ると同時にドアが開いた。

出てすぐに手すりの方へ駆け寄り、景色を見た。

「……綺麗」

つい口にしてしまう程の綺麗な光景が広がっていた。

青く澄んだ空は、私たちを迎えてくれた様に見えた。

「あぁ、綺麗だ」

お父さんも空を見上げた。

…――ここが私の新しい居場所。