「真麻、今日来たのは…「お母さんの話…でしょ?」

お父さんの言葉を遮るように言った。

一瞬目を丸くさせたが、

「もの分かりのいい娘だ」

と言って笑った。

私がまだ退院できる体じゃないって、お父さんが一番わかっている。

あ、どこを怪我したのかというと、胴や手足の骨折。

落ちた場所には木があったらしく、それが衝撃をやわらげてくれたんたと院長は言っていた。

おかげで今回は脳には異常がなかった。

ところどころ擦り傷があるけどね。

「知っての通り、あの発作で………亡くなったよ」

……っ…。

分かってるけど、実際言葉にだして言われると……涙が出てくる。

お父さんの目にも涙が浮かんでいるのが分かる。

私にとってもお父さんにとっても、光みたいな存在だった“家族”の“一員”。

誰も欠けてはならない。

私とお父さんが今こうして話しているのも、お母さんのおかげ。

何もお礼が言えなかった。

「名字も、“北条”になるだろう」

分かってるよ。

でも……、

「卒業までは、“桜野”でいたい」

最後、私の所為で命を落としたお母さん。

だからせめて、高校生をお母さんに見届けてほしいの。

お母さんが残してくれたこの命。

どうか、最後まで……。