「…杏里ちゃん」
そう呼ばれて、あたしはまたびくりとする。
ウソ、今の見られたっ!?
振り返った瞬間、優斗君の切なげな表情が見えた。
「もしかして、今の聞こえた?」
泣き笑いみたいな、ぐちゃぐちゃな顔で、優斗君を見る。
ダメだ、こんな泣いてちゃ。
「ごめんなさい、優斗君。あたし、実はずっと忘れられない人がいて。今でも多分好きなの。」
「…」
「でもね、これだけは信じて。優斗君とキスした時は、確かに優斗君にドキドキしたのっ。好きになれるって思ったから、誰でも良かったワケじゃ…ないっ。」
「…ねぇ杏里ちゃん。そんな言い方されると、期待しちゃうんだけど?」

