こんな偶然を、あの日から何度望んだことだろう。
祐輔ともう一度会える日を。
東京に来た時からずっと夢見てたのに。
最近では諦めかけてたからかな、おかしいな。
何でこんな動揺してんの、あたし。
何で…
「…ごめん咲、編集長。あたしちょっとトイレっ!」
そう言って急いで立ち上がると、トイレへと走る。
涙を誰にも見られたくなくて。
喉の奥が熱くなった瞬間、あたしは走り出してた。
こらえる余裕なんてなかった…
バタンッ
トイレのドアを急いで閉めて、こみ上げてくる何か。
「っひっく、うっ、うっ…」
何で泣いてんだろ。
あの日、手を放したのは自分なのに。
泣く資格も、後悔する資格もない…

