「え、でも、あたしには見えないはずじゃあ…」
「人間の前に現れる事ぐらい出来るよ。ただ、面倒なだけだ」
マシロのそれは、ココに見せるものとは随分と違うものだった。チラリと送る視線には、何の感情も見られない。ココ以外の人間に興味なんて、マシロにとってはある訳が無いものなのだ。
そんなマシロとは対照的に、興味津々といった様子の笑華は穴が開きそうなほどマジマジとマシロを見詰めると、思わず尋ねていた。
「あんたは、本当に…鬼?」
ーーその言葉に、マシロの機嫌はより悪い方向へと導かれた。
「君達は、目で見えないと信用しないくせに、見えたら見えたでまた一から説明を求める。…面倒で仕方ない」
嫌気がさす。人間という矛盾の塊に。
「しかもその大半が、ココへと向けられるんだ。僕が現れた所でココの負担しかならない」
マシロはココを見詰めて言った。スヤスヤと眠るココ。小さなこの子は今までずっと耐えて来たのだ、そんな人間達から向けられる敵意、害意、悪意から。
「……じゃあ、今日は何で出て来たのよ」



