ココとマシロ



「……大丈夫」


その声にハッとして、笑華は腕の中のココへと目をやる。

すると苦し気に息をしながら笑華を見詰めるココと目があった。


「大丈夫…マシロが、来てくれるから」

「……え?」


『マシロ』


それは、今朝聞いたばかりの名前。


「マシロ……お願い、来て」


「助けて…」そうココが小さな声で呟いた瞬間、一瞬、空気が変わったのを笑華は感じる。


ザワッと身体の中の何かが反応した後、やけに周囲がシンと静まり返ったような…そんな感覚にとらわれる。どこかピンと張り詰めた空気が辺りに漂い始めたのだ。


「……マシロ…」


するとココが、泣き出しそうな表情でそう呟いた。

彼女が視線向ける先、そこに笑華も目をやるが、笑華の目にはただ何も無い空間だけが映し出されるのであった。