「…いや、人じゃねぇしな」
数秒間の間を置いて、思い出したかのようにそう呟く直哉。
「あ、ホントだ!」と目の前で驚くココは、もういつも通りの彼女に戻っていた。
「…あ、分かった。篠宮サン」
「え?何が?」
「篠宮サンって嘘つかないんじゃなくて、つけないんじゃね?」
その言葉に更に目を大きくしたココは、「う、嘘くらいつけるもん!」なんて、何故か怒る。
「いーや、絶対そうだ。そうなんだ」と自信満々に言い切る直哉。そんな直哉はココに目をやって、笑った。
「嘘つきから掛け離れてんじゃんね、篠宮サン」
「笑華はバカだよなー」なんて言う直哉につられて、いつの間にかココも笑っていた。
こんな風に言ってもらえるのは初めてで、転校してからたくさん初めてな事ばかり起こるな、なんて嬉しく思った。



