「……なんだそれ」
最初に戸惑いを口に出したのは、笑華だった。
「鬼?なにそれ。なんかどんどん意味分かんない感じなんだけど」
その口調は強めであり、ココを責めているようにも感じられる。
「でも鬼なんだ。マシロが言ってたから」
「いやもうさ、そんな事言われても。何?黒いのとか鬼とか、本当に本気で言ってんの?」
「本気だよ!だから今日説明しようと思って来たんだもん!」
「説明ったって、そんなのされても嘘っぽさが増すだけだっての。まさかそんなのまで登場しちゃうと何かもう無理なんだけど」
呆れたと言わんばかりの勢いの笑華に、ココは「そんなぁ…」と、説明する気にもなれなくなった。何を言ってもダメなんだと、ココは落ち込むしかない。解決策なんて浮かぶ訳が無い。そんなココにはもう、言うべき言葉を探す事も、言葉を口にする事も出来なかった。
「……」
ーーそして、沈黙が続くそんなピリピリとした空気の中。
「じゃあ、その鬼を見せてくれればいーんじゃね?」
それを破るように口を開いたのは、直哉だった。



