「エミカちゃん!話が、話があるの!」
授業を終えたと同時に聞こえて来たのはココの必死な呼びかけで、笑華はきたきた、と心の中でニヤける。
しかしその声に反応したのは、笑華だけでは無い。
「あ、オレもオレも!」と、窓際の方からいつもの騒がしくも爽やかな声がして、直哉も活き活きとココらの方へ向かってやって来た。
が、その時。
「あ、な、直哉君!」
可愛らしい声で、直哉の名前が呼ばれる。その声に直哉が振り向くと、声を掛けてきたのは同じクラスの美波だった。
彼女からは精一杯の力を込めて、勇気を出して直哉に声を掛けた、そんな様子が見られた。それもそのはず、美波は直哉の事が好きなのだ。そしてこれはクラスの全員が知っているとも言える事実の一つだったりする。
…でも残念な事に、本人にだけはその気持ちがまだ伝わってはいない。直哉はそういう事に関しては案外鈍感なのだ。



