「名前を聞かれたのも初めてだった。君の名前は知っていたけど、知らない振りをした。なんだか恥ずかしくて。そしてその日、君が僕に名付けた事で僕はマシロになった。それから君が僕の名前を呼ぶたびに、僕はまるで特別なものになったような、そんな気持ちになった。あの日から今日までたった一年と半年…短い間だったけど、色々あったね」
マシロはココの手を取った。そしてギュッと握りしめる。
「ココ…僕の願いを、聞いてくれるかな」
改まった雰囲気に、ココは何?と尋ねる声がなかなか出なかった。聞いてしまったら終わりな気がした。しかし、マシロの言葉はそれを待たずに続いていく。
「君にずっと、笑顔でいてほしい。僕にしか出来ない、僕の力で君を幸せにしたいんだ」
あぁなんで、なんでそんな風に言うんだろう。と、ココは思う。
「君が諦めなければならなかった、たった一つの大きな願い。叶う訳などないと言い聞かせて来たそれを、僕が叶えてあげる事が出来るなんて…こんなにも、僕にとって幸せな事は無い」
そんな風に言われたら、もう、断れる訳がない。
「ココ。僕の願いを聞き入れてくれるかな」



