マシロは微笑んだまま、まるでおとぎ話を話すかのような優しい音色で言葉を紡ぐ。
「君の姿を見ていた。たった一人で耐える君。そして辛くても微笑んで見せる君は、今まで見た他のものと違うものに見えた。僕は君に興味を持った。でも姿を表すつもりはなかった。たまに見かけて君の思いを感じる、それだけで僕もその新しい感覚に充分満足したから。でも…ある日、近くでいつもの君と、割と大きな影の気配を感じた」
「出会った時の事、覚えてる?」と、問いかけるマシロに、ココは頷く。忘れるはずもない、ココがマシロに初めて助けられた日。ココがマシロと、名付けた日。
「自然と身体が動いていた。姿は隠したつもりだったのに…なぜだろう。今でも分からないんだ。もしかしたら僕は、君に僕を見つけて欲しかったのかもしれない。でもその時はしまった、と思ったよ、君が怯えてしまったら…と。でも、君は違ったね」
目の前にいきなり現れたその初めて見る姿に、目を剥いて驚いたココ。しかしその表情はみるみるうちに変わっていきーー、
「ありがとう、と。僕は初めて言われた。いつも見ていたものとは違う、何の辛さも持たない、眩しいくらいな笑顔で。それを僕に向けられるたことは初めてで、一瞬思考が止まった」
なんて、マシロは懐かし気に小さく笑った。



