ココとマシロ



マシロはココの肩を強く掴む。ココの思考を止めるために。ここでは気持ちが溢れてきやすい。だからココがこんなにも強く気持ちを口にするのだがーーもう一つ。ココの気持ちは本物になる。

マシロはチラッと外へ目をやる。そこには薄暗い影が取り巻き始めた子供達の姿があった。ダメだ、ココを宥めないと。このままではココの心の方が闇に呑まれてしまう。


「…ココ、」


マシロが口を開いたその時だった。ポツンと冷たいものが降って来る。
ポツリ、ポツリと降り始めたそれは、まさしく雨。ここは部屋の中。しかしそんな事はこの場所では関係の無い事。この部屋の中でだけ、しとしとと雨が降り始めた。


「ココ…泣かないで」


目の前のココにマシロは声をかける。ココの瞳からはポロポロと涙が溢れていた。


「ココ…」

「…本当は、分かってるの…」

「え?」

「本当は、ちゃんと分かってたの…」


そう言うとココは俯いて、口を閉じた。その場に沈黙が続き、聞こえるのは雨粒の音だけ。目の前の小さな君は身体を震わせている。


でも君は、分かっていると言った。


マシロは言葉を待つことにした。