ココとマシロ



不思議と、ココに不安はなかった。
手を引かれるままに歩き続ける。水は足元、膝上、腰、胸、そしてーー


「…っ!」


身体の全てが、水に包まれた。
潜る瞬間はやはり反射的に息も止めたし、目も閉じた。もちろん海水を飲み込んでしまわないように、目がしみないようにするためだ。

しかしどうだろう。いざ全て浸かってしまうと、今まで感じていた水の温度や抵抗、質量が一切消え去った。息も出来る。

ココは、そっと目を開けてみた。一番に目に入ったのは、ずっと手を引いてくれた大好きな白い君。


「…マシロ、居たね」


繋がれたままの手をぎゅっと握ってみる。すると握り返してくれる暖かな手。


「僕が君に嘘をついた事があった?」


そう言って振り返ったいつも通りのマシロを見て、ココは自然と肩の力が抜けた。