机に顔を伏せたままでも直哉はすぐに分かった。それは人間ではない。影でもない。こんなの、アイツしかいない。
「…少し時間をくれないか」
それはちょうどホームルームが終わる頃だった。今直哉が席を立っても何の問題も無い。
聞こえてきた思い描いていたものと全く同じ声に直哉は従い、教室を出た。
そのまま連れていかれたのは、時間問わずに人通りの無い校舎裏。直哉と声の主が初めて顔を合わせた時。それも確かここ、校舎裏であった。
「…オレは間違った言い方したかもしれない。でも、お前に文句言われる筋合いはねぇからな」
目の前に居る真っ白な奴に対して、先手をうったのは直哉だった。
「…分かってる」



