尋ねる笑華。するとまた、直哉の表情は硬くなった。
「…オレは、何にも分かってなかった」
「え?」
「分かったつもりでいた。でも…もっと違う所にいたんだ」
「…それってどういう…ココちゃんの、話だよね?」
悔しそうに呟く直哉に聞き直した笑華だったが、「そろそろ始まんぞ。戻れよ」と、悔しげに、難しい顔をしたままの直哉が答える気が無いのかそんな事を告げる。
すると直哉の言う通り、ちょうど担任が教室へと入ってきたので笑華は自分の席へと戻る事になった。まだまだ何も分からない。直哉の表情の意味も、ココに何が起こっているのかも。だからホームルームを終えた後に、笑華はもう一度直哉の方へ向かおうとすると…すでに直哉は、そこから姿を消していた。
トイレかなと思ったが、一時間目が始まる時間になっても直哉が戻る事はなかった。心配した担任に「直哉は体調悪くて保健室行ってます」と一応告げておく。
あんな直哉を見たのは初めてだったけれど、笑華には何となく分かった。きっと直哉は、自分がやるべき事を見つけてしまったのだろう。だから今すぐそこへ向かったのだろう。
さて、いつ帰ってくるのやら…
感謝してよねと、笑華は心の中では直哉に言ってやった。



